昨夜の満月は綺麗だった。
象牙でできたシャボン玉のようだった。
「シャボン玉」といえば、以前どこかで覚えたコクトーの
詩を思い出す。
シャボン玉の中へは
庭は這入れません
まはりをくるくる廻ってゐます
堀口大學の『月下の一群』からの引用だ。
フランス近代
詩の作品を集めたもので、コクトーの作もいくつか収録されている。
少し前に入手したのだが、ぜひ満月の下で読みはじめたいと思い、
昨日まで我慢して取っておいた。
稲垣足穂の『一千一秒物語』も捨てがたいが、既に一読済みだ。
それに、あれはむしろ月の見えない晩にこそ読みたくなる。
それぐらい、あの本の中には月のエッセンスが詰まっている。
それでいてモダンな軽さがある。
カーテンを半開きにした窓辺でドライフルーツを齧りながら、
ミントリキュールをたらした紅茶でもすすりつつ読むのがいいかもしれない。
『月下の一群』は、ことばたちが、匂いたつ真夜中の花の野辺の如くに広がっている本だ。
これは踏み込んで、分け入って、渦巻く香りで体を飽和させてついに昏倒するまで、
読み耽るのがいいかもしれない。
さらに、小高い丘の上から風にそよぐ花畑を眺めるように読み、
また小川に浮かべた小船から身を乗り出して岸辺の一輪を摘み取るように読むのもいい。
ともかく思うさま、ことばに酔うことができよう。
うーん。
素晴らしい。
今夜も僕は、月に向かって
詩の万華鏡を覗く。