元町の洋菓子屋の二階で待ち合わせる。
一応シークレットゲスト扱いなので、遅れて到着。
元町か。
以前来た時よりも、街の雰囲気に飲まれていない気がするのは、
それなりに心の余裕が出来たからなのか、
それとも誰かが待っているということで、
我が身の寄る辺なさを感じなくて済むからだろうか。
フランス山を登り、港の見える丘公園へ。
ここから見下ろす港の周辺も建物が増えて、
ずいぶん景観が変わったように思う。
大佛次郎記念館のレンガの壁を撫で、花の少ないバラの庭を抜け、
公園を出たら外国人墓地へと下る。
入り口の前まで来ると、偶然にもこの日は解放日だったらしく、
区画は限定的ながらも中に入ることが出来た。
ツイてる。
入り口脇の小さな建物で史料展示にざっと目を通し、
墓地の順路へ足を進めると、白い猫が坐っていた。
誰の墓だろう。
名前はついていても僕はその名前を知らない。
墓石の上に、スッと背筋を伸ばしているその猫が、
ふとこっちを見上げた時に目が合った。
猫の瞳は青かった。
真っ白な細身の体から、鋭角な逆三角の顔が生えていて、
やぶにらみの眼が透き通るような蒼さで光っている。
その青は一瞬のうちに、海よりも濃く、空よりも淡くうつろう。
鮮やかで儚い輝きを両の瞳に宿して、どれくらいのあいだ、
あの猫はそこにいたのだろうか。
どれほどの時間を経れば、瞳はゆらめく青さを放つようになるのだろうか。
これからいつまでの間、あの猫はあそこで坐っているのだろうか。
その眼差しの前を、何がどれだけ通り過ぎるのだろうか。
あの猫は見つめつづけるのだろうか。
青く密かな、あの瞳で。
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