スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 
 

名前を付けてみた

ある日、バス停でバスを待っていたときのこと。
一本前の便にはタッチの差で間に合わず、次の便までたっぷり待機することになった。
9月といえどの炎天下に、額で汗が玉になる。
夏の終わりに蝉たちの歌も最後のリフレインに入り、シャウト、シャウト、蝉シャウト。
セミシャウト、だとシャウトしきってないみたい。
「週末だけシャウトしてます」とか「本職のシャウトほどじゃないけど素人のシャウトの域じゃないよね」的な、
「セミリタイア」とか「セミプロ」とか、なんだか未練がましいような憐れっぽいような、
実は陰でちょっと煙たがられたりする趣味人ぽくて哀しい感じ。

なんてことを考えるともなしに考えながら、雲の形はまだまだ夏だなあ、
とぼんやり空を眺めて、それなりに心は平穏だった。

それが、なんなのだ、あの輩は。
ビロプビロプビロプビロプビロプビロプビロプビロプと、これを早口で音読するさらに4倍速ほどの、
耳障りなことこの上ない音を撒き散らしながら走り過ぎていく。

音の主はさっさと通り過ぎてしまったのだが、何故かその音が耳の奥に残る。
思い出したいわけでもないのに、何故かそれが再生され、耳障り感が蘇る。
イライラする。
イライラして額にしわが寄ると、汗の玉が崩れて顔面にへばりついてくる。
イライラしているところへさらにイライラする。

ちくしょうめ、あいつのせいだ。
と思ってみたところで、あいつって誰?という問題に行き当たった。
当然の事ながら通りすがりの原動機付自転車乗りだから、心当たりも何もない。
じゃあ、「ええい、あの通りすがりの原動機付乗りめ」とか言ってると、
言ってるうちに舌がもつれて「とおりすがれろげんどるけっけじぇってさのれみ」とか言っちゃって、
自らの醜態にさらにイライラすることになり、もはや生きているのがなんだか虚しくなってくる。

しかしここで挫けてはダメだ。
ここで人生を諦めてはあの音の主に負けたことになる。
だいたい彼奴めが名無しであることがよくない。
かといって追いかけて名を問うている時間は無い。
ではどうすればいいかというと、ここが僕の天才的なところで、こっちで名付けてやればいい、という境地に辿り着いた。

ただ名付けるといっても、まるで闇雲な思い付きでは面白くない。
面白くないと、イライラとか人生の虚しさが晴れない。
ではなにか手掛かりはないかというと、あの耳障りな音以外に思い当たるものはない。
というわけで、あの音を念頭において考えてみよう。

そもそも、あの音は何故あんなに耳障りなのか。
周波数や周囲の反響音など、科学的な要因もあると思うのだが、
さっきから気になっているのは何か聞いたことのある嫌な音に似ているのではないか、
ということだ。

風が吹いてきた。
汗を吸ったシャツが冷えて、背中にピタピタとへばりつく。
背筋にムズムズした感触が走り、背骨がわななき、ある感覚が蘇る。
ひらめいたのはその時だった。

そう、この感じである。
あのビロプビロプビロプビロプビロプビロプビロプビロプの4倍速の音、
これに似た音を聞く場面を思い出した。

それは下痢に見舞われた時である。
中でも、かなり極限状態まで抑圧を強いられた後の「悲鳴」に似ている。
腸内で、ガスと固形物と水分のバランスが、5:2:3ぐらいまで圧縮された、被虐の極み。
腕を振り、膝を曲げて歩くことを放棄してまで、括約筋の制御に神経を動員し、
そのとき我々は、現代人としての尊厳をかけた戦いの渦中にある。
やがて約束の地に辿り着き、遂にその苦しみに別れを告げるとき、敵の断末魔が聞こえる。
「今日は敗れたが、いつの日か必ず決壊させてやる」という呪いの言葉と共に。
束の間の開放感の後に、そのヒリヒリした口は復讐の予告を聞くことになるのだ。

ビロプビロプビロプビロプビロプビロプビロプビロプの4倍速音は、僕にその声を思い出させる。
いま思えば、あの音を聞いたあと、その日は腹の調子がよくなかったような気がする。

よし、決まった。
あの音の主の名前は「ゲリッペン」だ!

というわけで、耳障りな音を出す原動機付自転車ならびにその運転者を「ゲリッペン」と呼びます。
ドイツとか北欧の音感がしてカッコいいでしょ。
でも意味や意図は既に述べたとおりです。

お気に召しましたら使ってみてください。
スポンサーサイト
 
 

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://nightfly.blog18.fc2.com/tb.php/221-2cf5b053

 

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。